【初級者〜中級者向け】ビアバー店員がクラフトビールのビアスタイルを浅く広く解説【26選】

世界には細かく分けると100種類以上のビールがあります、という触れ込みから始まるクラフトビールの記事を、親の顔より見たんじゃないかってくらい見てきました。

ただその中で、(一応玄人の)筆者から見ると「初心者向けの記事にその要素いる?」と思うこともしばしば。やたら発酵方法を詳しく書いてあるけどビアスタイルの説明は疎かだったり、外観の説明はしっかりしているけど飲んだときに感じるアロマやフレーバーの説明が適当だったり。「ほんとにこのビール飲んだことある?」と思うこともあります。

今回は、日本国内のビール審査会でも使われている「BEER STYLE GUIDELINE 2004©」をもとに、筆者がビアバーのカウンターでお客様に説明するような口ぶりで解説します。逆にいえば、ここに書いてある以上のことは、クラフトビールを飲み始めた方には必要のない知識だと思います。

家飲みで「次はどれ飲もうかな」と迷ったときの羅針盤にしてもらえたら嬉しいです。

上級者編もあるのでこちらもご覧くださいね。

(この「ビアスタイル・ガイドライン」は、米国ブルワーズ協会の承認のもとに「2020 ワールドビアカップ・コンペティションスタイリスト、デスクリプション&スペシフィケーションズ」に基づいて編纂されています。)

下に行けば行くほど、商業的に作られている数が少なくなると思います(個人的な主観)。

それではいってみましょう!!

あ、ちなみに上級者編もあるのでこちらもご覧くださいね!

ラガー

大量生産に向いているラガーは、全世界で最も生産量の多いビールのカテゴリーです。

ピルスナー

ラガータイプのビールの中で、最もポピュラーなスタイルがこのピルスナーです。色はゴールドで、フルーティさは一切無く、キリッとした苦味と、ふくよかな泡立ちが特徴のビール。

細かく分けると、ジャーマンピルスナーやボヘミアンピルスナーなどがあります。ジャーマンピルスナーはシャープな苦味が特徴で、大手ビール会社が好んで作るビアスタイル。ボヘミアンピルスナーはジャーマンに比べて色がほんの少し茶色に近づき(コクも少し増える)、とうもろこしのような香りを出すものもあります。「ピルスナーウルケル」がボヘミアンピルスナーの代表格です。

日本のクラフトビール会社だと、箕面ビール「ピルスナー」が有名です。

https://www.minoh-beer.jp/products/pilsner/

家飲みのコツ: ピルスナーは缶のまま飲まない方がいいかと思います。100均の薄張りグラスでいいから注ぐだけで、泡のきめ細かさと苦味のキレが全然変わります。合わせるなら、枝豆か塩味のポテトチップス。シンプルな塩気がピルスナーの苦味と最高に合います。

次のステップ: ピルスナーが好きなら、次はヘレスを試してみてください。苦味が少し穏やかになる分、モルトの甘みが顔を出します。(ただし、舌が肥えてないと違いが分からない可能性あり。いや美味しければそれでいい!!)

ヘレス

ピルスナーと非常によく似ていて、飲み口は軽く、フルーティーさを全く感じないドライなラガービールです。目隠ししてテイスティングした場合、ピルスナーと区別するのは不可能に近いですが、個人的には「ピルスナーの苦味少ないバージョン」という表現をよく使います。

最近は京都醸造などがクオリティの高いヘレスをリリースしています。神奈川県鎌倉市のヨロッコビール「Bright Moments」も人気が高いです。

https://kyotobrewing.com/products/shintenchi-helles

家飲みのコツ: ヘレスは「ビールの味がしっかりわかる温度」で飲んでほしいです。冷蔵庫から出して5分くらい待つと、モルトの優しい甘みが出てきます。合わせるなら白身魚のフライやコンビニのチキンナゲット。穏やかな味同士がよく合います。

ダークラガー

一言でいえば黒くて軽くてスッキリしたラガーです。有名なスタイルはドイツの「シュバルツ(ビア)」。ABV3〜4%なので、スタウトやインペリアルスタウトほど重いのは嫌だけど、黒いビールを飲みたい!というときにぴったり。

筆者の周りでは、千葉県舞浜にある地ビール工房、ハーヴェストムーン「シュバルツ」が美味しいと評されています。

https://www.ikspiari.com/harvestmoon/lineup/

家飲みのコツ: 揚げ出し豆腐や肉じゃがなどの和食にも意外とマリアージュします。ダークラガーの軽いロースト感は醤油の風味とよく合うんです。「黒いビール=重い」と思っている人にこそ飲んでほしいスタイル。

インディアペールラガー(IPL)

ここ数年で多くのファンを獲得しているスタイル。基本的にはラガーの特徴であるスッキリあっさりを踏襲しつつも、ホップのフレッシュさを感じられます。酵母由来の洋梨やバナナのようなフルーティさではなく、ホップ由来のシトラス感や果実感を楽しみたい方におすすめ。

大手のキリンも「グランドキリン」シリーズでIPLを出していますし、デンマークのクラフトビール会社ミッケラーも「American Dream」という名前でIPLをリリースしています。

https://my-beers.com/beers/5319

家飲みのコツ: IPLは「IPAは気になるけど、苦いのが怖い」という人へのベストな入口です。ラガーのキレがあるので、唐揚げやフライドポテトとの相性が抜群。

次のステップ: IPLが好きならCold IPAへ。さらにホップ感が強くなりますが、ラガーのキレは健在です。(IPLとCold IPAは同じだ!とかいう不毛な議論をするつもりはありません!!美味しければいい!)

ウィンナーラガー(ヴィエナラガー)

ピルスナーなどの黄色いビールと、シュバルツなどの黒いビールの間のような赤褐色系の色をしたビールです。酵母由来のエステルやホップのフルーティーさはほとんどないので、純粋にモルトのトースト感や甘みを楽しみたいときにおすすめ。

岩手の老舗ビール会社ベアレンから、ハイクオリティのヴィエナラガーがリリースされています。

https://www.baerenbier.co.jp/2022/03/01/coolshipviennalager/

家飲みのコツ: ソーセージやベーコンとの相性が鉄板。モルトのトースト感と燻製肉の香ばしさが共鳴します。

メルツェンとボック

ドイツ周辺では非常にポピュラーなスタイルたちですが、日本国内ではそれほど流通していません。クラフトビールが隆盛を誇る遥か前から栄えてきた、いわば伝統的なビアスタイルです。色はやや赤褐色から濃いダークまで様々。ナッツやトーストを思わせるような香りを持つものもあります。ABV6%〜14%と若干高アルコール気味。

この類のビールは、輸出用に生産されていないことも多いので、現地で飲む方が圧倒的に美味しいというのが持論です。

https://shop.braeuzloh.de/produkt/braeu-zloh-maerzen

カリフォルニアコモン

ラガー酵母を用いていながら、エール酵母が発酵する温度帯で発酵するため、やや複雑でほんの少し酵母由来のフルーティさ(例えば焦がしたパイン、熟れたバナナの皮など)が感じられます。色は褐色で透明、飲み口は中程度の重さ。日本で商業的に生産しているビール会社はほとんどありません。

有名どころだとアンカー社の「アンカースチーム」、国内だと東京都板橋のTokyo Aleworks「ケンタッキーライドコモン」くらいでしょう。

https://www.anchorbrewing.com/our-beer/

エール

クラフトビールの成立には、大量生産された(≒画一的な)大手のラガービールに対抗して生まれたという背景が一部にあります。よって、多くのクラフトビール会社のフラッグシップビールは「エール」系であることが多い印象です。

ペールエール

イギリスや北米など地域によってわずかな違いはありますが、基本的にはフルーティで苦味の少ないビールです。色は麦わら色からややアンバーまでの範囲。オレンジやトロピカルフルーツ、茶やフローラルな香りのフレーバーを持つものが多いですが、たいてい癖が少なく万人におすすめできるビールです。

アメリカ西海岸のブルワリーであるシエラネバダの「ペールエール」が始祖に近いとされ、ここから現代クラフトビールの歴史が広まったとも言えます。

https://www.antenna-america.com/products/b041-b24001?srsltid=AfmBOoquag2t_CMbjRpIV4olGRQlR7ouN-wkgO5hNiiIIEhFGoqm_TNb

家飲みのコツ: 「クラフトビールって何から飲めばいいですか?」とお店で聞かれたら、僕はまずペールエールを出します。家飲みでも同じ。最初の一本はペールエール。合わせるならコンビニのファミチキやナゲット。フルーティなホップ感と揚げ物の油が驚くほど合います。

次のステップ: ペールエールが「もう少しパンチほしいな」と思えたら、いよいよIPAの世界へ。

IPA

IPAといえば、ガツンとしたホップのフルーティさ!退屈なラガーを吹き飛ばすほどの勢いで、クラフトビール市場を席巻しているスタイルのひとつです。苦味とフルーティーさが強く、色は黄色からダーク系まで様々。派生もかなりの数があり、トロピカルでジューシーなヘイジーIPA、乳酸菌で酸味を出したサワーIPA、ローストモルトを使ったブラックIPA、アルコール度数を3〜4%に抑えたセッションIPA、ライ麦を使ったライIPA、ほとんどラガーに近いキレを持つコールドIPAなど、枚挙にいとまがありません。

有名な銘柄はブリュードッグの「パンクIPA」、ストーンの「ストーンIPA」。個人的にはサワーIPAが好きなので、ハドソンバレーからリリースされているサワーIPAがおすすめ。ヘイジーIPAだったらOther Half「Oh…」が唯一好きです。

IPAに関して徹底的に解説した記事があるので、こちらもご覧ください。

https://otherhalfbrewing.com/beer/oh/

IPAに関して徹底的に解説した記事があるので、こちらもご覧ください。

家飲みのコツ: IPAはグラスに注いだ瞬間に香りが爆発するので、缶のまま飲むのは本当にもったいない。合わせるならスパイスの効いたものがおすすめ。コンビニのタンドリーチキンや、ピザ(特にサラミ)が鉄板です。

次のステップ: ヘイジーIPAのフルーティさが好きなら、サワーIPAへ。酸味が加わると世界が変わります。

ケルシュ

ドイツ西部、ベルギーにほど近い町ケルンで醸造されるビアスタイルです。色合いは淡い麦わら色で泡持ちがよく、エールビールでありながらラガーに近いようなスッキリさ。ほとんどの場合フルーティさは含まれていませんが、感じる場合は洋梨、リンゴ、リースリングのような香りが感じられます。正確にはケルンで作られたものしかケルシュと呼べず、それ以外は「ケルンスタイル・ケルシュ」と呼ばれます。伝統的にはシュタンゲという棒のようなグラス(200ml)で飲みます。

日本国内だと、KUNITACHI BREWERYが「1926」というハイクオリティのケルンスタイル・ケルシュをリリースしています。

https://kunitachibrewery.com/kuniburu-beer/1926/

家飲みのコツ: ケルシュは和食との相性が良い隠れた名選手。お刺身の盛り合わせや、冷奴に生姜とネギを乗せたものと合わせると、お互いの邪魔をせず食事がするする進みます。

ヴァイツェン

小麦を多く使用したドイツのエールビールです。泡立ちは豊か、濁りがあり、クローブやナツメグのような香り、ABV4.9%〜5.5%のわりには飲み口は重く、フレーバーの主幹はよくバナナに例えられます。いわゆるホワイトエールに含まれる、近年の日本でも人気が上がっているスタイルのひとつです。

似たようなスタイルに、ベルギーのベルジャンウィットビールがあります。こちらはコリアンダーとオレンジピールが用いられ、比較的ヴァイツェンより飲み口は軽め。ヒューガルデンもこのスタイルです。

クラフトビール業界をよく知っている人の間では、埼玉県の麦雑穀工房「雑穀ヴァイツェン」や、富士桜高原麦酒「ヴァイツェン」が美味しいことはあまりにも有名です。

https://zakkoku-beer.shop/items/5e8e832e2a9a421fc386162e

家飲みのコツ: 「ビールの苦味が苦手」という人に最初に渡すなら、ヴァイツェンかベルジャンウィットです。バナナのような甘い香りが苦味を包み込んでくれる。合わせるならクリームチーズとクラッカー、またはフルーツ(特にバナナやオレンジ)。

セゾン

フランスやベルギーを中心に興った、酵母由来の香気成分(エステル)のキャラクターを全面に押し出したビアスタイルです。色合いはゴールドからライトアンバーの間くらい。全般的には洋梨やアプリコット、モモのような風味があります。中には馬や羊のような香りから、土や動物の皮、地下室の壁のような香りを持つものや、軽度の酸味を持つものも。副原料としてフルーツとの相性が抜群で、モモ、ウメ、プラム、レモンなど酸味のある果実が多用されている印象です。

神奈川県鎌倉市のヨロッコビールから評価の高いセゾン「ペニンシュラセゾン」がリリースされています。

https://yorocco-beer.stores.jp/items/63c0c751ce1bd2557cf16664

家飲みのコツ: セゾンは食中酒としての能力が異常に高い。スーパーのポテトサラダに黒胡椒をガリガリかけたものと合わせてみてください。ペッパーとセゾンのスパイシーさが共鳴して、居酒屋の100倍楽しいペアリングになります。

次のステップ: セゾンの「土っぽさ」「動物的な香り」が気になったら、それはワイルドエールへの入口です。

ポーターとスタウト

細かくいえば違いはありますが、どちらも黒ビールで芳醇なロースト香を持っています。アルコール度数やボディの厚さはビールによってまちまち。一度黒ビールを飲んで苦い経験をした方でも、別の黒ビールを飲んで好きになったという方もいます。副原料にコーヒーやチョコレート、ナッツ、バニラ、メープルを使用していることも。

アルコール度数を高めてフルボディにしたものを「インペリアルスタウト」と呼びます。

https://www.buxtonbrewery.co.uk/beers/core/gatekeeper

家飲みのコツ: ポーターやスタウトはチョコレートとの相性が圧倒的。コンビニで板チョコ(ビター推奨)を買って一緒に飲むだけで、高級バーの体験に近づけます。それと、黒ビールは冷やしすぎないで。冷蔵庫から出して10分待つとロースト香が花開きます。

バーレイワイン

高いアルコールでフルボディのビールといえばこれ。色は赤みがかった茶色をしていることが多く、フルーティな酵母由来のエステルがかなり強め。レーズン、プラム、アプリコット、紹興酒、ポート、シェリー酒のような風味を持ち、麦芽由来の蜜のような甘さ(残糖感)を持つものもあります。

ペアリングするなら、レーズンやイチジクが入ったパテ・ド・カンパーニュや、レバーペーストなどがおすすめ。(さらにいうと、パテ・ド・カンパーニュは東京都世田谷区尾山台にあるオーボンヴュータンで買うのがおすすめ。)

https://anglojapanesebeer.com/collections/beer/products/bread-barrel-aged-barley-wine

家飲みのコツ: バーレイワインはワイングラスで飲んでください。温度変化でレーズンやプラムの香りがどんどん開いてくるので、30分くらいかけてゆっくり楽しむのが正解。一晩に1本、これだけで満足できるビールです。

その他エール

赤褐色でモルトの甘みをよく感じられるアンバーエールや、色が淡く適度なホッピーさを持つブロンドエールなど、ここには書いていないエールスタイルのビールが数多く存在しています。既存の枠組みに囚われないフリースタイルのビールもどんどん世に放たれているので、ボトルショップやビアバーに行った際は「このビアスタイルは一般的なものですか?それともニッチなものですか?」と聞いてみてください。そのビアスタイルの立ち位置を理解する手がかりになります。

サワーエール

厳密には「エール」に含まれますが、サワーエールは筆者の好きなスタイルなのでちょっとだけ詳しく解説します。

ゴーゼ

ドイツ発祥のサワーエールです。伝統的には塩や乳酸菌、コリアンダーなどを用いて酸味を表現しますが、現代では形態が自由になり、果実や野菜、ハーブなどを加えることもあります。モルトのアロマやフレーバーはほとんどないので、さっぱり乳酸菌の酸味を感じたい初心者におすすめ。副原料も大体調和してくれるので何が入っていても美味しいのですが、キュウリを使ったゴーゼだけは筆者は好きになれません…。

横浜のブルワリー、TDM1874「浜なしゴーゼ」がめちゃくちゃ美味しかった記憶があります。

https://tdm1874brewery.com/products/kn049#

家飲みのコツ: ゴーゼの塩味と酸味は、意外にも寿司と合います。スーパーのパック寿司で十分。酢飯の酸味とゴーゼの酸味が同じ方向を向くので、違和感なく楽しめます。

次のステップ: ゴーゼの酸味が心地よかったら、ベルリナーヴァイセへ。さらに酸味が前面に出てきます。

ベルリナーヴァイセ

ベルリン発祥のサワーエール。淡い黄色の見た目で、モルトやホップのニュアンスはほとんどなく、特殊な酵母由来の馬や山羊のような香りを持つことがあります。伝統的には瓶内で二次発酵させるので炭酸をよく含み、食前酒やアペタイザーとのペアリングによく使われます。ベリー系のフルーツやハーブなどの副原料との相性も良いです。

個人的にはブリュースキーの「Mango Colada Berliner Weisse」が大好きです。

https://dig-the-line-store.com/collections/brewski/products/brewski2

家飲みのコツ: 暑い夏の日に冷蔵庫でキンキンに冷やして飲むのが最高。フルーツ系のベルリナーヴァイセなら、バニラアイスにかけてビアフロートにするという裏技もあります。

ランビック

ブリュッセル近郊のゼンヌ川流域で醸される、野生酵母を使用した樽発酵ビールです。通常、酵母は清潔な培養室で培養されますが、ランビックで使用される酵母は醸造所周辺の空気中に存在する野生酵母たちで、その発酵プロセスはめちゃくちゃ複雑です。色はゴールドからやや褐色、ホップの香りは全くないです。酵母から生み出される強烈な酸味と、熟成中に発生する馬小屋のような匂いは、飲んだ人を一瞬で虜にさせるか、一生飲まないと決断させるかのどちらか。しかし中には花や柑橘、洋梨のような風味を持つものもあります。人生で一度は、この悪魔的なビール、ランビックを飲むべきだと思います。

フルーツを浸漬したものはフルーツランビックといわれ、サワーチェリーを使用した「クリーク」というスタイルが有名です。おすすめはカンティヨンの「グーズ」。

https://www.cantillon.be/geuze-nl?lang=fr

家飲みのコツ: ランビックはワイングラスで、温度変化を楽しみながら飲んでください。冷たいうちは酸味がシャープ、温まるとフルーツや花の香りが次々と顔を出す。合わせるなら、ブルーチーズかカマンベール。微生物同士の会話が始まります。

ランビックを含むワイルドエールの世界については、こちらの記事で詳しく解説しています。

変わったビール

フルーツビール

各社からフレーバードビールとして多くのフルーツビールがリリースされています。副原料としてよく使われるフルーツは、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、リンゴンベリー、シーバックソーン、ストロベリー、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ユズ、ヒュウガナツ、ウォーターメロン、キュウリ、リンゴ、キウイ、マンゴー、パイナップル、ドラゴンフルーツ、ザクロ、アサイー、モモ、イチジク、バナナなど。ベースは癖のないウィートエールやラガーが選ばれることが多いですが、IPAと合わせて力強いフルーティさを全面に押し出す場合もあります。

個人的おすすめは、カリフォルニアのThe Rare Barrelのフルーツ(サワー)ビール。どれも最高です。

家飲みのコツ: フルーツビールは「ビールが苦手な人」をビール好きに変える最強の武器。お花見やBBQに持っていくと、普段ビールを飲まない人が一番喜びます。

スモークビール

燻製香が特徴のビール。最も有名なスタイルがドイツ・バンベルク発祥のラオホビールです。見た目はやや茶色で飲み口は中程度からやや重め。麦芽をあらかじめ燻製させてから醸すことで独特な風味をもたらしています。

日本国内だとNAMACHAんBrewingの「なまちゃんのラオホ」が有名。むろん、めちゃくちゃ美味しいラオホです。(ちなみにこちらの会社が製造している燻製、どれも最高に美味しいです。)

https://smokebeerfactory.com

家飲みのコツ: スモークビールにはスモーク料理を。コンビニの燻製チーズやスモークサーモンとの相性が鉄板。燻製×燻製で香りが何倍にも増幅します。

チリビールとスパイスビール

ハバネロやハラペーニョなどの唐辛子はビールの副原料としてよく用いられます。特にジンジャーとの相性が抜群で、辛口ジンジャーエールのようなフレーバーが表現されることも。スパイスビールは文字通りスパイスを使用したビール。クローブやフェンネル、ナツメグから、花、野菜、種、植物の根、樹皮を用いたものまで。

ローグの「イエロースノーピルスナー」(トウヒの樹皮使用)や、Passific Brewingの梅と赤しそを使った「Umee」などがあります。

ちなみにローグは2025年に閉業しています。

https://note.com/passificbrewing/n/n2651a5539d17

チョコレートビール

ダークチョコレートやココアを用いて作られたビールです。チョコ自体に甘味はありませんが、乳糖(ラクトース)や水あめ、バニラなどと合わせてデザートビールのように仕立てられていることが多い印象です。

筆者がアシスタントブルワーとして働いていた神奈川県のサンクトガーレンでは、毎年バレンタインに合わせて「インペリアルチョコレートスタウト」をリリースしています。

https://www.sanktgallenbrewery.com/valentine/imperial-chocolate-stout/

家飲みのコツ: チョコレートビールはデザートそのもの。食後に1本だけ、ゆっくり楽しむのが正解。マシュマロを添えると、さらに贅沢感が増します。

ワイルドビール

ワイルドは野生を意味します。醸造所周辺に棲息する野生酵母を取り込んで発酵させた、ランビックなどの既存のスタイルに該当しないビールを総称してワイルドビールと呼びます。ランビックはブリュッセル近郊で醸造されたものしか「ランビック」と名乗ることができないので、日本で作られたランビックは「ランビックスタイル」もしくは「ワイルドエール」と呼ぶことになります。

筆者の地元千葉県では、ソングバードビールというブルワリーがワイルドエールを醸しています。「Brett」で使われている酵母は、お庭の空気中から捕獲したとのこと。神業に近いです。目白の田中屋に置いてあると思います。

https://songbirdbeer.blogspot.com/p/2023-beer.html

次のステップ: ワイルドビールに興味を持ったら、ぜひワイルドエールの解説記事を読んでみてください。ビールの概念が変わります。

フレッシュホップビール

通常ホップは顆粒状(ホップペレット)にして運用されますが、フレッシュホップビールは収穫後すぐの新鮮なホップを使用しなければなりません。ホップの収穫は真夏なので、例年各社から晩夏〜秋口にかけてフレッシュホップビールがリリースされます。IPAとして仕立てられることが多い印象です。

ヤッホーブルーイングのクラフトザウルスから、地元軽井沢産のホップを使用したフレッシュホップIPAがリリースされています。

https://yohobrewing.com/news_release/fresh_hop_ale_2022/

家飲みのコツ: フレッシュホップビールは「季節もの」。見かけたら迷わず買ってください。次に出会えるのは来年です。

酒イーストビール

清酒酵母を用いて作られたビールです。ホップのフレーバーやアロマは抑えられていて、清酒酵母由来のオレンジ、リンゴ、マスカット、メロン、バナナ、バター、練乳、椎茸、ブルーチーズ、クローブ、シェリー酒、紹興酒のようなニュアンスが現れることがあるようです。

200年以上の歴史を持つ長野県の酒蔵、玉村本店が志賀高原ビールブランドとしてリリースしている日本酒と結びつきの強いスタイルのビールは、どれを飲んでも圧倒されます。こういうビールを飲むと、「自分はブルワーは向いてない」とわからされるくらい美味しいです。

https://tamamura-honten.co.jp/?pid=175371167

家飲みのコツ: 酒イーストビールは日本酒の親戚。冷奴やお浸しなど、和のおつまみと驚くほど合います。日本酒好きの友人をビール沼に引きずり込む最終兵器です。

最高のビールを、最高の状態で飲むための「引き算」

自分の好みのビアスタイルが見つかって、お気に入りのビールを家に買って帰る。その時、せっかくならグラスにも少しだけこだわってみませんか?

高いワインセラーは要りません。オープナーも100均で十分です。でも、「グラスの薄さ」だけは絶対に妥協しないでください。現場のプロが家飲みで愛用している、洗うのも楽な最強の極薄タンブラーについて、こちらのコラムでこっそり紹介しています。

最後に:「自分の美味しいモノサシ」を作ってほしい

ビアスタイルというのは、ビールの審査会で「このビールが決められた定義に合致しているかどうか」を判定するための指針でもあります。審査会では定義から外れれば減点され、入賞を逃すことになります。

ただし、決められたスタイルから外れていても、ビールに内在する価値は減りません。ビアスタイルはいわば恣意的に決められたものであって、ブルワーにとってそんなものを知ったこっちゃない場合もあります。ブルワーが作りたいものを作って、消費者が「美味しい」と感じれば、そのビールは価値がある。審査会に入賞したビールだけが美味しいビール、というわけではありません。

国内クラフトビール市場は、2000年代の冬の時代から第二次ブームの2010年代を経て、今まさに玉石混交の時代を迎えています。だからこそ、他人のパラメータで評価されたビールだけを美味しいと捉えるのではなく、ぜひご自身で「自分の美味しいモノサシ」を作ってください。

そして、もしそのモノサシが壊れるような体験をしたくなったら——ワイルドエールを飲んでみてください。

野生酵母が、木樽が、時間が、微生物が作り出す予測不能な味。ビアスタイルのガイドラインには収まりきらない、一期一会の液体。僕が人生を賭けて追いかけている世界です。

2028年、ワイルドエールとシャルキュトリのペアリングを主軸にした小さなバーを東京に開きます。その道のりは開業構想シリーズで発信中です。

ご参考になれば幸いです。少しでもこの記事がいいなと思ったら、クラフトビール初心者のご友人に見せてあげてください。

この記事を書いた人
さとし

ブログ歴4年ほど、渋谷のクラフトビールバーで働く28歳。元アシスタントブルワー。2028年頃にワイルドエールをテーマにしたバーを開業する予定です。好きなビアスタイルはランビック。

筆者のSNS
ビアバーのカウンターから、最高の一杯を。

元ビール工場スタッフで、現在は渋谷のビアバー店員として毎日ビールを注いでいます。
知識だけじゃない、現場の空気感や「本当の美味しさ」を伝えたくてこのブログを始めました。
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