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クラフトビール業界で働く方や、クラフトビールをよく嗜んでいる方の中で、日頃からインプットをよくされている方は、この本の表紙をお見かけしたことがあるのではないでしょうか。
この本は、筆者の人生の方向性を決めたと言っても過言ではありません。なぜならこれを読んで、よりランビックを好きになり、ランビックを数多く扱うビアバーを開業しようと考えるまでになったからです。
ブルワーさんやビアバー店員さん、ベルギー系のビールやワイルドエールに興味がある方、酸っぱいビールに驚嘆しているクラフトビール初心者さんには是非読んでいただきたい本の一つです。
『ランビックに魅了された人が読むべき本『ランビック ベルギーの自然発酵ビール』
要約:ランビックの歴史や、ランビックに属するいくつかのビアスタイルについて解説。またランビックの法的定義や醸造者の組合など、制度的側面についても言及。そしてメインとなる、ランビック醸造を支えている化学的技術や微生物の発酵メカニズムの解明。後半で、2011年時点で稼働しているランビック醸造者(ブルワリー)について個別に紹介しています。
この本に出会ったのは、2020年頃。勤務先のブルーパブで、ブルワーとして働いていた同僚のKくんの薦めでした。ランビック自体は知っていたものの、そういえば化学的なことは深掘りしたことなかったなと思い、すぐに買って読んでみました。
ページを開いて、1章を読み終えた頃には頭がパニックになりました。
曲がりなりにもビールの勉強をしていたとはいえ、自分にとってベルギービールは未開の領域。知らないビアスタイルや、醸造に関する難解な単語がいくつも出てきたからです。
それと同時に、久しぶりに「インプットできているな」という感覚もありました。クラフトビールの本は、大体書いてあることは同じで、あとは体裁やデザインで見た目に差異があるくらいだと思っていたからです。ビール図鑑とか、ビアスタイル解説の本とか、どれも同じこと書いてて全部一緒じゃん!なんて。
でもこの本は違いました。2章以降はいよいよ化学的なことに踏み込むのですが、これがまあ複雑。
エンテロバクター・クロアカ、クエブシエラ・アエロゲネス、ペディオコッカス、ブレタノマイセス、サッカロマイセス・イヌシタトゥスなど、ここには書ききれないくらい、膨大な種類の微生物が登場します。
ワイルドエールであるランビックは、空気中の酵母を使ってアルコールを生成させる関係上、他の微生物や雑菌を取り込みます。それらの微生物や雑菌が、数年間かけて熟成されるビール樽の中で、互いに活発化しあったり、効力を打ち消しあったりすることで複雑な風味をランビックにもたらします。
その途方もない熟成プロセスが、この本には事細かに書かれています。
一般向けのクラフトビールの本には似つかわしくない、もはや醸造学科の教科書なのでは?と思うほどです。
この本を読んでから、世のランビックやワイルドエールを飲むと、少し違った飲み方をできると思います。
このチーズのような香りは、古いホップを使用することで現れるイソバレリアン酸由来かな?とか。ちょっとだけとろみがあるように感じるのは、ペディオコッカス・ダムノサスのせいかな?とか。
ちょっと変な人になるかもしれませんが、ビールの風味を理解する解像度が一段あがると思います。
¥4,000くらいの高価な本ですが、一家に一冊は置いておくと良いと思います。
酵母の知識は他のビアスタイルにも応用が効くので、ホップやモルトではない何かを感じたとき、きっと役に立つでしょう。謎なアロマやフレーバーに出会ったとき、その奥で息づいているものは、酵母や微生物の働きかもしれませんからね。
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